皮膚、人間のすべてを語る

『皮膚、人間のすべてを語る』モンティ・ライマン (著), 塩﨑香織 (翻訳)

書評
執筆責任者:あんまん
皮膚は誰しもが身に纏っている最も身近なものの一つである。しかし、私たちはその存在をあまり意識することはない。現代は脳の時代である。学校でも仕事でもあれこれ考えることを要求される。頭の中の内面的なことが重視され、身体的な側面が見落とされがちだ。しかし、脳が考えていることは、すべて身体的な入力によって得られたことを元にしている。その点において接触という重大な役割を果たしている皮膚を無視することはできない。私たちは皮膚がどのように外界を認識して脳にその情報を届けているかをほとんど知らない。例えば、今あなたが着ている服が、脱ぎ着している時は服の感覚があったのに、着ている間にその感覚がなくなってしまうことに疑問を思ったことはないだろうか。本書を読めば身体における皮膚の果している役割に驚かされるだろう。皮膚がどのような仕組みをしているかを知ることは、脳の時代だからこそ逆に必ず役に立つと私は思う。だが、皮膚の面白いところはその構造や仕組みだけではない。皮膚は単なる物質的なあり方を超えた影響力を及ぼしている。皮膚に消えない傷をつけたり、刺青を入れたりして他者とコミュニケーションを図る生き物は人間だけだ。また人間は、皮膚の色によって団結したり、分断したりする。著者の社会的背景を踏まえた皮膚の考察は示唆に富む。本書は10章で構成されている。その内容は皮膚の物理的な構造とはたらきから、スキンケアの情報、日焼けに対する皮膚の応答、皮膚と心の互いに及ぼし合う影響、皮膚が社会に与える影響まで多岐にわたる。著者のモンティ・ライマンはそんな魅力あふれる皮膚に魅了された皮膚マニアだ。著者は本書を「皮膚という驚くべき臓器にまつわる話題をひとめぐりするラブレターのつもりで書いた」と語る。自分の好きなものについて、自信満々に語る人は面白い人が多い。この分野であれば誰にも負けないというものを持つ人はいつも魅力的だ。
(800文字)

追加記事 -note-

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

ジェイラボ
基礎教養部

コメント

コメントする

目次