ウクライナ戦争

『ウクライナ戦争』小泉悠(著)

書評
執筆責任者:Tsubo
歴史の流れが大きく動いてから,あと1ヶ月で1年となる.ロシア-ウクライナ戦争は勃発から1年の時間が経つ今もなお夥しい数の人命と鉄量を吸い込み続けており,未だその終わりは見えない.本書はそのロシア-ウクライナ戦争が勃発するまで,及び開戦から約8ヶ月間戦局の推移,また戦争自体が及ぼした影響について概観する本である.ただし,過去について本書が扱う範囲はクリミア併合,ドンバスの「共和国」独立まで遡るのではなく,2021年春ごろからである.ただし,当たり前ではあるが,ロシアが文字通り国内全土から15万人もの兵をかき集めて実施した「特別軍事作戦」のような大規模作戦は,(世界最強の兵站組織を持つアメリカ軍ではない限り)その準備に相当な時間がかかる.戦争の足跡は私達が預かり知らぬところで着々とその歩みを進めていたのだ.ロシア側が輸血体制を確保し,また遺体の埋葬手順の整備を進めていた状況などは当時の私は知る由もなかったが,今から思うと不気味そのものである.年が明け,事態は若干の緊張緩和のそぶりを見せつつ,一気に開戦まで突き進んでいく.2月ごろになると私や私の周りでも「ウクライナ情勢がどうやら一気に緊張度を増しているらしい」と議論になった記憶がある.そして,開戦-キーウへの集中攻撃・「斬首作戦」の実施と失敗,ウクライナの奮戦とロシアの撤退,ドンバスの一進一退の状況.ようやく届き始めた西側諸国からウクライナへの支援と,それに裏付けされたハルキウの反転攻勢,逆にますます苦しくなるロシアが発令した部分動員令.それらの動向は報道でも広く知られているが,本書はより軍事的に突っ込んだ解説をしている.また,この戦争が一体「どのような形式の」戦争に位置付けられるのか,そして日本が考えるべき事項まで議論は及ぶ.もはや第二次大戦後最大と言ってもいい軍事衝突をこの機に再び考える際に是非手に取っていただきたい.
(797文字)

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基礎教養部

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