孤独がきみを強くする

『孤独がきみを強くする』岡本太郎(著)

書評
執筆責任者:イヤープラグさざなみ
私は芸術に疎く、岡本太郎の作品は『太陽の塔』くらいしか知らなかったが、去年の秋に彼の作品を初めて直に見る機会に恵まれた。原色で一杯に塗られたキャンバスを前にすると、言葉にならぬ高圧力が感じられ、圧倒されたことを今でも覚えている。岡本太郎の作品から感じるあのエネルギーは、彼が生涯をかけて貫いた「孤独」に源泉をもつものであろう。ここで言う「孤独」とは寂しさを伴う後ろ向きなものではなくて、「すべてに妥協しないで自分をつらぬいていく」積極的な孤独である。本書は過去に出版された岡本太郎の本の中から「孤独」にまつわる言葉たちを抜粋して再編集された言わば格言集だ。抜粋元となった本の出版年は1950年代から90年代にまで広く渡り、これは彼が彫刻やインテリアなどにも表現領域を拡げ、万博のテーマ展示プロデューサーに選ばれた時期と重なる。対立する二つの要素を調和させずにそのまま共存させる「対極主義」を掲げながら、日本における既存の芸術をぶっ壊している真っ最中である。そんな中で彼から発せられた言葉はどれも強烈ではあるものの、毎日をなんとなくで生きている私には刺さらなかった。「人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。」とか「ひとりひとりが、宇宙なんだ。」とか、自分の中からは決して出てこないであろう言葉に触れて感じたのは、彼が描いた絵画と対面したときに感じたあの圧力と同じものだ。共感もできないし心地良くもないが、一人の人間の鮮烈な叫びを私は確かに受け取った。だから、この本はある意味私に刺さっている。私が本を読むのは、自分からは生まれ得ない表現に出会い、他者を感じるためである。格言集の類はそういった表現に溢れているし、短いフレーズは覚えやすい。生活の中のふとした瞬間にそれらを反芻することは、大袈裟に聞こえるかもしれないが、しかし確かに自分の生き方に影響を与えている。
(786文字)

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基礎教養部

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