脳からみた男と女

『脳からみた男と女』新井康允(著)

書評
執筆責任者:ジパング
今回私が紹介するのは「脳から見た男と女」である。男と女、それはヒトを区別する上で最も単純な基準だ。男と女では身体的な特徴や考え方など様々な部分が異なっているが、はたしてその違いがどこから生じているのか解説しているのが本書である。前半は生物学の観点から受精から成熟までの過程をたどり、胎生期におけるホルモンが性分化に及ぼす影響、疾患などのホルモン異常や生活習慣などの外的要因による性自認への影響、脳の構造の違いによる男女の行動パターンの違いについて書いている。後半では児童画に着目し、幼少期に描く絵から男女の違いについて紐解いている。色彩や絵の題材、写実的か抽象的かなど実際に幼児が書いた絵を見せながらそれぞれの違いについて解説している。男児では機械や車といったメカニカルな物を描くことを好み、女児は人物を描くことを好む。人物を題材にした場合でも女性は生涯を通して同性や子供の絵を描くことを好み、男性の絵をあまり描かないとされている。色彩に関しては女性の方が平均的に男性より2色ほど多く色を使い、原色を避け中間色といった弱い色使うそうだ。また男児は俯瞰した構図の絵を描くが、女児がそういった構図の絵を描くことは稀であるそうだ。最後に医師との対談形式で心の性や性教育、同性愛について書かれている。同性愛には3パターンあり1つ目が周りに異性がおらず性的欲求のはけ口を同性に求めるもの、2つ目が遊びとして受け入れているもの、3つ目が性の対象が完全に同性でないといけないものである。この本は昭和に書かれた古い本ではあるが性教育や性自認、同性愛といった現代社会でも積極的に取り上げられている問題を脳という切り口をもとに論じている。脳の生物学的な解説だけでなく、心理学や教育論などにも視点を置きながら性について述べているので興味を持った方は後半の対談部分だけでも一読して欲しい。
(782文字)

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基礎教養部

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