ヒトの目、驚異の進化

『ヒトの目、驚異の進化』マーク・チャンギージー(著)柴田裕之(翻訳)

書評
執筆責任者:けろたん
人間の視覚には4つの超能力があるという。曰く、テレパシー、透視、未来予見、霊読。最後の霊読は聞き慣れないにしても, あなたができると言い張るのがどれか一つなら気の利いたナンパぐらいにはなるかもしれないが二つでイカサマ師、三つともなれば完全にあちらがわの人間扱いされることは間違いない。だがこれらは実際に人間に備わっている能力らしい。評者があちらがわ扱いされるまえに外連味のないいいかたに直すと、ヒトの目の超能力は以下の4つ。1章. テレパシーの力 = 肌の内側の血液の状態を感知して感情を読み取る。2章. 透視する力 = 茂みの中で視界を保持する。3章. 未来を予見する力 = 「錯視」によって動きを予測する。4章. 霊読する力 = 自然界を認識するしくみを転用して文字を読む。視覚特性が進化の産物と本当に言えるためには何が確かめられなければならないのか、どの章でも定量的に語ることが難しい問題を説得力のある実験や観察・解釈で科学の俎上に載せて迫っている。副題にある文明 (=文字) は4章のテーマで、一見単純に見えるアルファベットのようなものから複雑な漢字まで、これほど多様な文字の読み書きがどのような視覚特性に支えられているのかが統一的に説明される。驚くことにアルファベットでも漢字でもヒトが読み書きしているものは 「同じ」 ものだという。視覚についての素朴な疑問, 「なぜ (人間の) 目は前向きに2つついているのか?」 は2章で取り上げられ、 いわゆる立体視説とは違う仮説が論証される。 角度をすこしだけ変えた視点から同じような景色を見ることで, 両目からの像を重ね合わせ、障害物を消した視界を脳内で作り出すことができる、というのが肝。これだけでは、 本当に 「進化上」 の理由でそうなったと言えるのか気がかりな方はぜひ本書を読んで欲しい。
(774文字)

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基礎教養部

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