MMTによる令和「新」経済論

『MMTによる令和「新」経済論』藤井聡(著)

書評
執筆責任者:西住
MMTという言葉がある。モダン・マネタリー・セオリー。現代貨幣理論と呼ばれるものだ。本書は最近頻繁に耳にするようになったこのMMTを解説した書籍である。MMTは思想的な主張をするものではなく、貨幣とは何かを説明する理論だ。しかし内容は常識とはかけ離れた話で、一般的な感覚からすれば信じ難い内容と言える。本書でも語られているが、MMTは当初トンデモ理論として扱われ、異端の存在だったようである。それが多少なりとも世間に浸透してきたのは、内容を正しいと考える人が増えているからだろう。ではトンデモ理論と呼ばれた内容は何なのか。いくつかピックアップすると、①貨幣は貸借関係の記録である、②貨幣は銀行等が貸借関係の記録を書き込むときに創出される、③現代の貨幣の信用と価値は国家の徴税権によって保障される、などなどである(他にも重要な理論はたくさんある)。特に面白いと思ったのは③である。我々は普段お金の価値が何によって保障されているのか全く気にしていないが、よくよく考えると非常に不思議なものである。国が保証していると言われても、なぜどうやって国が保証できるのはわからない。それに一つの答えを与えるのが国家の徴税権である。MMTによると、お金に価値があるのは、それを税金の支払いに使えるから、ということだ。どんな人間も税金の支払いからは逃れることができず、日本国内であれば日本円以外では不可能である。法人や個人に日本円の入手が義務付けられることによって円が拡大し、流通し、支配的になっていく。逆に日本国内で円以外(仮想通貨等)の支配が限定的なのは、税の支払いに使えないからだ。この説明を聞いたとき、ストンと何かが腑に落ちた。個人的に一番納得できる説明である。この納得感がMMTが広がっている理由なのかもしれない。
(752文字)

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