スマホ脳

『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン(著)

書評
執筆責任者:Hikaru
本書の著者で現役の精神科専門医であるアンデシュ・ハンセンは、ノーベル生理学・医学賞の選考委員会の存在で知られるカロリンスカ医科大学を卒業後に、ストックホルム商科大学で経営学修士(MBA)を取得した、という異色の経歴の持ち主だ。そんな著者はスマホに秘められた依存性と悪影響を示すために、まず初めに感情やストレス、うつなどの人間が生来もっているネガティブな部分に焦点を当て、それら全ての役割や反応原理を、斬新な生物学的進化論の観点から説明する。つまり、「それらは生存のために必要だった」と。本書は同様に、多くの研究結果を参照してスマホ依存の現状を明らかにしながら、スマホ、特にSNSの危険性や、魅力的にみえる根本的理由などを、進化論、選択圧、そして人間の基本原理(どのように行動するか、反応するか)の面から明示するとともに、スマホやSNSが集中力、記憶力、共感能力(協調性)、睡眠の質を低下させ、ストレス耐性を下げて精神的な不調を招くという事実を読者に対して明らかにする。そして最後の10章は、デジタル化の影響を色濃く受ける現代において、その影響を最小限に抑えるための実用的なアドバイスで締め括られる。“スマホは私たちの最新のドラッグである“”フェイスブックその他のSNSは、人間の報酬システムをハッキングしている“”現在の20歳が80歳になる頃には人生の5年間をSNSに費やす計算“”スマホ使用によって注意散漫になり、集中力や記憶力、睡眠の質が低下する。ストレスを感じ、幸福度が下がる“”あるゆる種類の運動が知能に良い効果を与える“筆者は「テクノロジーは受け入れるしかない天気とは違う。テクノロジーの方が人間に適応すべきであって、その逆ではない。」と述べる。本書は、科学技術の危険性を理解しながらも人生を豊かにするために用いていこうとする人々にとって、現代を生き抜くバイブルになり得るだろう。
(795文字)

追加記事 -note-

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

ジェイラボ
基礎教養部

コメント

コメントする

目次