「リベラル」という病

『「リベラル」という病』岩田温(著)

書評
執筆責任者:チクシュルーブ隕石
おそらく『「リベラル」という病』という題名を見て本書をかなり攻撃的な本だと感じる方がいると思われる。しかし著者の岩田氏は他者を尊重しながらも個人の自由を最大限尊重するという立場に立つリベラリズムと括弧付きで表現される「リベラル」には大きな乖離があると述べている。本書の中で病とされている「リベラル」は上で述べたような意味で用いているのでは無く、非常にガラパゴスな日本特有の反知性主義の人物達の事を指す言葉として用いられている。本書の大きな特徴として様々なマスメディアや反知性的な知識人・学者による具体的な言動を詳細に検討しているという点が挙げられる。つまり政治的立場が異なる人物達を根拠なく「リベラル」と断じ、中傷をする著作とは一線を画しているのである。この点に著者である岩田氏の”リベラルな保守主義者”としての姿勢が伺える。また第5章では共産主義と日本で「リベラル」を標榜する人々の欺瞞とも言える言動が書かれている。それに伴って主にソ連と日本共産党がもたらした惨禍というべき結果を基に、共産主義なるイデオロギーについて的確な考察を行い、共産主義思想が幻影たる理由が明快に示されている。本書中では一貫して「リベラル」な人々の都合の悪いことから目を背ける態度が反知性主義的であると批判している。最終章である第6章では「リベラル」への提言として思想家河合栄治郎のリベラリズム論を再検討している。特定の人物の思想を崇めることは危険を孕む可能性があるとしながらも、個人の「人格」の成長を最も大切なものと位置づけ、全体主義たるコミュニズムとナチズムに徹底抗戦の構えを辞さなかった彼の姿勢こそが現代の「リベラル」に必要なのではないかと岩田氏は提言している。これを読んだ方は是非一度本書を手に取り、「リベラル」とはどのようなものかを確認した上で、今を生きる私たちがこれから何をしていくべきであるかを考えて頂きたい。
(800文字)

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