言語の本質

『言語の本質』今井むつみ (著), 秋田喜美 (著)

書評
執筆責任者:Yuta
ソシュール曰く、言語には恣意性がある。しかし、オノマトペは例外である。普通の言葉は確かに音から意味を推測することはできないが、オノマトペは音から意味が推測できてしまうのはなぜだろうか、オノマトペは文化や言語の違いを超えて普遍的なのだろうか。そういった素朴な疑問の探求からはじめ、幼児はどうしてオノマトペを好むのか、幼児はどのようにして言語を習得していくのか、言語の根源は何だろうか、オノマトペはそこでどのような役割を果たしているのか?という問題にまで発展していく。また、知覚経験を持たないAIがどのように言語を習得するのかをめぐる「記号接地問題」にも触れる。さらに本書は、オノマトペはジェスチャーと普通の言葉とどちらとより近いのだろうか、という観点で、10種類の項目(コミュニケーション機能、意味性、超越性、継承性、習得可能性、生産性、経済性、離散性、恣意性、二重性)で比較している。また、抽象度の比較もされている。オノマトペは、幼児でさえ新たに作り出すことができても、それ単体で言語として機能することは極めて難しいという理由がよくわかるようになっている。ページ数が少ないが、舐めてはいけない。内容の密度が異常に高い。発達心理学&言語学研究の思考過程が、飽きないようエンタメ的に繰り広げられていくので、読み始めると止まらないのではなかろうか。著者の一人の別の著作で『英語独習法』というのもあるが、そちらも読んでみるといいのではなかろうか。また、本書にも登場する「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeのチャンネルで似た話題を動画媒体として提供しており、そちらも見やすいのでオススメである。文学でもダジャレでも何でもいいが、とにかく何かしらの形で言葉が好きだという人には間違いなくお勧めできる本である。
(750文字)

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