パスタぎらい

『パスタぎらい』ヤマザキマリ(著)

書評
執筆責任者:ていりふびに
日本ではイタリアン、フレンチ、エスニック、様々な国の料理を食べることができる。逆もまた然りである。海外で日本の料理を食べることができる。しかし、多くの日本人は海外で食べた日本食に違和感を感じるであろう。つまり、私たちが普段食べている外国の料理も地元の人からすると違和感があるはず。そんな興味を持ちながら、手に取ったのがヤマザキマリ著の「パスタぎらい」である。「テルマエ・ロマエ」で有名な著者はイタリアに30年以上暮らしていおり、その経験を元にした食文化の比較、考察に関するエッセイをまとめたものが本書になる。著者は17歳からイタリアに住み始めたようだが、タイトルからも分かるように味覚はイタリアよりも日本よりである。そんな著者のイタリアでの生活を通して、地元イタリア人にとってのイタリア料理、日本料理、日本人にとってのイタリア料理、日本料理を感じることができる。そう、「感じることができる」。私がこの本を手に取った理由、お勧めする理由はここである。地元固有の食文化やレシピを「知識」として身に着けたいのであれば、本としては専門書やレシピ本などを読む方がいいだろう。しかし、「食」を「知識」だけで埋め尽くすことはできない。「食」には「感覚」が重要である。本書内の登場人物と「感覚」を完全に共有することはできないが、本書を通して少しは共有できるはずだ。人それぞれバックボーンが違い、同じ場所で全く同じ料理を食べたとしても完全に同じ「感覚」を共有することはできないのだから、活字に求めるのは少しで充分である。勿論、「食」は本を読むだけでなく、食べて初めて意味がある。しかし、この本を読んで感じたことは、いつか食べるイタリア料理、日本料理の「感覚」を変えることだろう。その意味では本を読むこと自体が「食」になっているのかもしれない。
(762文字)

追加記事 -note-

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

ジェイラボ
基礎教養部

コメント

コメントする

目次