ともに食べるということ

『ともに食べるということ』福田育弘(著)

書評
執筆責任者:ていりふびに
今回私が紹介する書籍は福田育弘著「ともに食べるということ-共食に見る日本人の感性」である。本書は飲食文化を専門とする著者が「共食」という観点からフランスと日本を比較しながら飲食について語っている。「共食」と聞くと多くの人は「家族の団欒」や「友人との楽しい時間」などのポジティブなイメージを抱くのではないだろうか。この一見当たり前とも思える感性を疑うところから本書はスタートする。本を読み進めていくと意外なことに、日本において「共食」と「家族の団欒」が結びつき世間に根付いたのは1970年代頃であり比較的最近のことだと分かる。では日本に古くから存在する「共食」とは何か。それはカウンター席での食事に代表される料理人とのコミュニケーションを重視した「共食」であると著者は答えている。実際、天ぷらや寿司など日本の代表的な料理はカウンター席のイメージが強い。これは日本の特徴でフランスを含む西洋の「共食」では「食べて同士」のつながりが軸になっている。私はこの本を読むまで意識していなかったが、高級店と聞いてカウンターの席が真っ先に思いつくのは日本人的であると思う。このように本書では異国の飲食文化との比較によって私たち日本人の飲食に対する感性が浮き彫りになっていく。こうした文化的な感性の多くは無意識であるため、私のようにこの本を読んで自分の中に「日本」を再発見する人も多いはずだ。そういう意味では全ての日本人にお勧めできるのだが私はこの本を特に「食に興味がない」という人にお勧めしたい。全ての人に当てはまるわけではないが、自分なりの食事に対する無意識のこだわりを自覚することは食事を栄養補給以上のものだと感じさせてくれるだろう。食事はどうせ必要なのだ。少しでも楽しい方がいい。
(735文字)

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基礎教養部

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