不道徳教育講座

『不道徳教育講座』三島由紀夫(著)

書評
執筆責任者:あんまん
いやーおもしろい。「大いにウソをつくべし」「弱い者をいじめるべし」「殺っちゃえと叫ぶべし」など思い切った不道徳の話ばかりで、この本を読んでいて何度もプッと吹き出してしまった。この本でプッと笑えるのは道徳的な人間であることの証拠であります。だから自分は道徳的な人間だなあと気づくことができます。しかし、三島由紀夫は「健康的な人間とは、本質的に不道徳な人間なのであります」と語ります。どういうことでしょうか。それは人間が本能的に不道徳な生き物であるからです。だから、その本能を抑圧して暮らすのは体に良くありません。そもそも本当に道徳的な人間なら、「不道徳教育講座」なんて危なっかしい題名の本を手に取ることはありません。三島由紀夫は人間がこのような危なっかしいものに興味が引かれると言うことをよく知っていて、またそれを積極的に肯定します。三島由紀夫は「不道徳を一つだけ持っていると危ない、できるだけ沢山持って、その間のバランスを取るようにすべきだ」とも語ります。私は現代の日本人は道徳的とは少々言い難いですが、明確な不道徳を持っている人間が少ないように感じます。人間は不道徳であることが自然であるから、道徳的すぎるのはかえって危ないのです。だから、自分が真面目で道徳的な人間であると思っている人ほどこの本を読んでほしい。三島由紀夫といえば、自衛隊駐屯地で自殺という強烈なイメージがあるかと思います。この本では、皮肉にも三島流の自殺防止法が語られています。また、ここを読めば逆説的に、実は三島氏がどれほど道徳的で、真面目な人間であるかを理解できます。ここは必読であります。この本の内容は本当に不道徳的なものばかりですが、総じて道徳的な本と言えます。でも、ここは不道徳に言ってやりましょう。「三島ァ、テメェなに自決なんてしてくれてんだ!バカヤロウ!殺っちまえ!」既に死んでいるので言いたい放題です。
(794文字)

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