決定版 ショパンの生涯

『決定版 ショパンの生涯』バルバラ スモレンスカ=ジェリンスカ(著),関口時正(翻訳)

書評
執筆責任者:Naokimen
ノクターン第2番、幻想即興曲、英雄ポロネーズ、子犬のワルツ、別れの曲、…。世間によく知られているショパンの曲をあげるように言われればすぐに10曲以上あげることができる。テレビ番組や映画などのBGMでショパンの曲が用いられることも多くあり、曲名こそ知らなかったとしても1度はショパンの曲を耳にしたことがあるはずである。そんな有名な作曲家フレデリック・ショパンはフランス人の父ミコワイ・ショパンとポーランド人の母ユスティナ・クシジャノフスカの間にポーランドで1810年に生まれ、1849年にパリで短い生涯を閉じた。本書はその39年の生涯についてしばしば当時書かれた手紙を引用しながら叙述したものである。本書の著者バルバラ・スモレンスカ=ジェリンスカはワルシャワの大学や音楽学校で教鞭をとる音楽学者であり、書簡などの原資料を徹底的に検証して本書を書いた。また、訳者の関口時正は本書に引用された書簡については信頼のおける各書簡集に戻って訳出し、フランス語で書かれたものも重要なものについては原文にあたって訳し直した。そのような意味で本書はかなり信憑性があるショパンの伝記であると言える。本書からはショパンの様々な面を垣間見ることができる。例えば、ショパンは演劇の才能もあったそうで、当時の名優が、ショパンが演劇の道を捨てて音楽を選んだことを嘆いたほどである。本書は8章からなる。初めの7章はショパンの生涯を述べたものであり、最終章はショパンのいくつかの作品について解説したものである。初めの7章の中で作品が出てきた時、また最終章を読む時は作品を実際に聴いてみることをお勧めする。音楽の価値は音楽自体に内在し、音楽を文章として表してもその音楽の全ては表しきれないからである。特に音楽の知識がなくても読めるので、クラシックに興味がある人はもちろんクラシックにあまり興味がない人も一度この本を手に取ってもらいたい。
(800文字)

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