科学の方法

『科学の方法』中谷宇吉郎(著)

書評
執筆責任者:Naokimen
現代社会において、言うまでもなく我々は科学なしには生きていけない。テレビ、携帯電話、飛行機、人工衛星など我々の身の回りには科学の進歩により生まれた便利なものであふれており、我々はそのような科学の成果を享受している。科学の進歩により我々の生活は便利になり続けているので、近い将来に人間のあらゆる問題が科学により解決されるだろうという科学万能的な考え方をする人は少なからずいるだろう。しかし、実際はそうではなく、科学には限界があり、科学が取り扱うのに適した問題のみを抽出してそれを解決しているのである。そのような問題に対しては科学の方法は強力でありそのような方向に対しては非常に発展している。そのような特殊な面だけを見ていると科学万能的な考え方に陥り兼ねないが、実際は自然についてほんの少ししか分かっていない。著者の言葉を借りれば、「火星へ行ける時代になっても、テレビ塔の天辺から落ちる一枚の紙の行方を予言することはできない」のである。科学に適した問題かどうかの最も重要な要素は再現可能性であるが、同じことを繰り返すのは実際には不可能である。しかし、幸いにして再現可能性が近似的に成り立つ現象が多く、そのような現象が科学の対象となる。そして、そのような再現可能性を土台として科学において用いられる様々な方法がある。本書ではその方法について詳しく述べられると共に科学の本質とは何かが追求される。著者の中谷宇吉郎は低温物理学が専門の物理学者であり、本書では自然科学に関する例が多く用いられ、専門外の人でも理解できるようわかりやすく書かれている。本書は60年ほど前に書かれたものであるが、本書で述べられている科学の本質およびその方法は現代でも変わっておらず決して古いものではない。科学の道を志す者から疑似科学にはまっている者まで科学の成果を享受する全ての人にお勧めできる。
(781文字)

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