科学哲学講義

『科学哲学講義』森田邦久 (著)

書評
執筆責任者:Naokimen
科学の発達により、今や我々は科学の知識に頼らずに生きることはできない。しかし、一方で、我々は日常生活とかけ離れているような科学の知識に信頼を置いている。例えば、宇宙はビッグバンによって始まった、人間は猿から進化したなどの私たちの日常生活とは直接関係のないものも含めて、我々はそのような科学の知識が正しいと思っている。では、我々がそのような科学の知識を正しいと思っているのはなぜだろうか。そのようなことを考える学問が科学哲学であり、本書は理学と文学の両方の博士号を持っている筆者が書いた科学哲学についての入門書である。本書は全6章から構成される。前半の第1〜3章では、科学的知識の正当化について論じられる。具体的には自然法則の必然性、因果の実在性、見えない世界の実在性について述べられている。後半の第4〜6章では、科学と非科学の区別の仕方について論じられる。科学と非科学の区別は簡単にできると思う人も多いだろうが、実はそう簡単にはできないということが4、5章の議論で判明する。だが、「この世の物質は原子や分子から構成されている」、「この世界のすべてのものは創造主がつくった」という2つの命題があったとき、前者は科学的な命題、後者は非科学的な命題だとすぐにわかるだろう。このように、我々は明らかに科学と非科学を区別しているはずであり、何らかの区別する基準を持っているはずである。第6章では今までの議論をふまえて科学と非科学を分ける基準について筆者の私見が述べられる。私は、特に本書を普段、科学の勉強や研究をしている人に勧めたい。普段何気なく使っている科学の手法の論理的な妥当性の有無、どのようにして科学は正当なものとして受け入れられているかといったことを知ることは重要である。もちろん科学の知識が正しいと信じ、その恩恵を受けているすべての人にもお勧めできる。
(777文字)

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