人はなぜ「美しい」がわかるのか

『人はなぜ「美しい」がわかるのか』橋本治 (著)

書評
執筆責任者:イスツクエ
今回紹介する本は橋本治氏の「人はなぜ「美しい」がわかるのか」である。まず本のタイトルになっているこの問いについて、その理由は「脳の働きがそのようになっているから」というのがあるかもしれない。しかし本書ではそういった理科系の知性による脳の本ではない。ある人には「美しい」がわかり、ある人には「美しい」が分からない、それはなぜなのかを考える本になっている。また、筆者はものに対しあらかじめ「美しさ」という価値がそなわっているのではなく、各人が「美しい」と感じたものが「美しさ」であるという立場をとっている。人が花を「美しい」と感じるとき、人は即座にはもぎ取らずゆっくりともぎとる。その花の美しさを損なわないようにという二義的な理由のほかに、「美しい」を実感したとき人は思考が停止してしまうのである。美しいものに出会ったときの「あ・・・」というつぶやきが種となり芽を出し花を咲かせるとそれは「美しい」という言葉になるのだ。台風に対して美しいと感じる人は多くない。それは台風は被害をもたらすものであり恐怖という感情が優先される。しかし、子どものころ台風ではなく台風のなか外に出て親に怒られることの方が怖いと感じ、台風の被害に対して「関係ない」というポジションを獲得した筆者は台風に対して怖いという感情は発生せず「美しい」と感じることができる。「美しい」を実感するためは背景も必要になる。「徒然草」を面白いという人と面白くないという人がいる。見る甲斐のないただの月を「有明の月」として美しいと感じるにはその背景を知っておかなければならない。「美しい」という言葉は誰しもが身近なものである。是非この本を読んで日常の中の「美しい」に対する理解を広げてみてはどうだろうか。
(728文字)

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