メカ屋のための脳科学入門

『メカ屋のための脳科学入門』高橋宏知 (著)

書評
執筆責任者:匿名希望
私が今回書評したのは,“メカ屋のための脳科学入門 〜脳をリバースエンジニアリングする〜“という本である.この本は非常に興味深くて面白く,人工知能に興味のある人ならば尚更だろう.この本では,人間に備わっている各機能に対する人工的な再現手法の例とその原理及びなぜその再現方法に至ったのかが事細かに非常に詳しく記されている.私が個人的に特に興味を持ち面白いと感じたものを挙げるならば,小脳の機能に注目し,フィードバック誤差学習による身体モデル構築についてであり,まず,小脳に障害が発生するとどうなるのかを切り口として,小脳の機能を考え,その機能を再現するには,どのような制御方式が最も再現できるのか,どのような運動モデルが必要なのかを考え,ブロック線図で実装した場合のことが考察されており,非常に興味深い内容となっている.また,その他では,脳の予測機能に関する内容で,人間に備わっている3万本の聴神経を22本の電極で代替できる理由についても非常に面白い内容となっている.本書をじっくりと読むことで,思考実験が出来,また,どういった思考を辿れば良いのかを学べるという良さもあると考えられる.更には,人間のある機能を科学的にどう捉えていき,どう処理すれば良いのかも具体例として学べるという良さもあると考えられる.また,脳科学を学ぶとなれば,本来ならば,膨大な専門用語の知識や数学的知識が必要になるはずであるが,本書はそのような知識はほぼ必要とせず,脳科学を今まで学んだことのない方でも興味を持って読み進めていくことが可能となっており,脳科学者を目指すきっかけにもなるような本でもある.本書は東京大学工学部機械工学科での脳科学講義の講義録の一部であるそうで,そのような名声高き教授の講義を紙面上で受講できるという良さもあるだろう.この本を手に取った諸君の健闘を祈る.
(777文字)

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基礎教養部

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