ハーフリアル

『ハーフリアル』Jesper Juul (著), 伸司 松永 (翻訳)

書評
執筆責任者:イヤープラグさざなみ
本書はゲーム研究の古典である。抽象的な概念であるゲームは、それをどの面から捉えるかによって幾つか定義の仕方があるが、本書による定義は以下の通りである:「ゲームは、可変かつ数量化可能な結果を持ったルールにもとづくシステムである。そこでは、異なる結果に対して異なる価値が割り当てられており、プレイヤーは、その結果に影響を与えるべく努力をおこない、またその結果に対して感情的なこだわりを感じている。そして、この活動の帰結は取り決め可能である」(p.51)。しかし上の定義は非ビデオゲームに基づく「古典的ゲーム」の定義である。ビデオゲームの登場によってゲームモデルは大きく変わってきており、本書では上の定義を拡張して「ゲームとは何か」を深掘りしていく。ここで本書のタイトルにもなっている、ゲームの半現実性について触れておく。ビデオゲームがプレイヤーに提示するのは虚構世界である。しかし虚構世界だからといって何でもできるわけではない。ゲームにはルールがある。ルールにはプレイヤーの行動を制限することで挑戦課題を生み出したり、逆に制限されていないことに対して意味を付与したりする働きがある(例えばチェスでは、チェスのルールがあるからこそチェックメイトに意味がある)。いずれにしても、ルールが存在するおかげでプレイヤーはゲームを楽しむことができる。しかしルールは常に明示的であるとは限らない。ビデオゲームの場合は、プレイヤーは与えられた虚構世界を手がかりにしてルールを推定することもあるし、その逆もある。虚構世界(フィクション)とルール(リアル)は一致することもあれば、しないこともある。しかしいつでも確かなのは、両者が相互に作用し合っていることである。半現実ということは、同時に半虚構でもある。初版が2005年とあって、例として紹介されるゲームは古いものばかりだが、内容そのものは本質的で決して色褪せていない。
(799文字)

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