AIの時代と法

『AIの時代と法』小塚荘一郎(著)

書評
執筆責任者:chiffon cake
本書はAI活用が急速化しようとする社会に対する現状の法律について考察している。最後にはガバナンスという概念が指針になりうると述べている。本書の特徴について、やはり餅は餅屋というように、法の専門家が書いていること。AIにまつわる世界と日本、それぞれの取り組みが対比的、ときには共通部分があるとして詳細に説明されている。正直お腹いっぱいになるくらいなので説明不足は全く見受けられなかった。ただ私がユーザよりも開発者寄りなので技術内容で疑問を感じる人はいるかもしれない。一方で法に関する事例などは随所にあり、現実で議論の必要性が発生している理由づけになっており、同時に法の限界が示されている証拠の提示でもある。著者の提言はいろいろあったが、一番は世界と比べて日本はAI開発が遅れているという一般的な考えに反し、むしろ肯定的に捉えているところだろう。現在の法律は元を辿ると中世ローマ法に行き着き、これが日本人の感覚とずれがあったにも関わらず、定着させることに成功した。というのが理由の根拠になっていた。またいわゆる日本企業のガバナンスも、今後のAI開発と相性がいいという。以上が未読の方へ紹介する話。以下は私なりの感想となる。元々法と法律は同じだとも思っていた。本書を読み、法律は国会が定めるルールであること、Yes/Noのような明確な境界を定めるのではなく、あるべき方針を定める方が多いこと、それに基づいて政府の省庁や自治体が作ったルールを含めたものが法体系であること、など知識ゼロの私でもよく納得した。コードは書いた通りにしか動かず、曖昧さが立ち入る余地がない。しかし現実の法は曖昧さを残している。書籍で紹介されている自動車のスピード超過の判定が良い例である。そして何より、曖昧さを残す原因となる複雑な要因に対して、どうアプローチするかは開発する側の勇気と手腕がいるのだろう。
(786文字)

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