ロボットと人間

『ロボットと人間』石黒浩(著)

書評
執筆責任者:Hikaru
本書の著者はロボット学(ロボット研究の科学的側面と技術的側面の両方を対象とする学問)の第一人者であり、特に人間酷似型ロボット(アンドロイド)分野において世界最前線で研究を推進している石黒浩教授である。著者は本書の中で、”ロボットを研究することは、人間を深く知ることである”という標語のもとに、ロボット研究を技術的側面、つまり現実世界で人の役に立つという側面のみに限定せずに科学的側面に結びつけ、構成的方法(工学的方法によって複雑なものを構成し、それをもとに複雑なものの原理を理解する研究方法)を用いることで人間自体(知能や意識や感情など)を理解する一助となると主張している。そして”人間は人間そのものに興味を持つ”という考えのもとにアンドロイドの開発に意欲的に取り組んでいる。本書の1,2,3章では自身の研究内容(様々なロボットやアンドロイド)とその意義が人間そのものに関する洞察と絡めて紹介されており、著者の目指すロボット社会におけるロボットの役割についても言及されている。また4章以降では「自律性とは何か」「心とは何か」「存在感とはなにか」など人間に関する疑問、そして未来の世界に対する考察がなされている。例えば8章や9章では”未来において人間は生身の体の制約から解き放たれて自由に体を発達させられる””人間は無機物から生まれて無機物に戻ろうとしている”と述べており、新たな人類の誕生まで推察している。このように、本書ではロボット技術の現状やロボット研究からみた人間そのもの対する考察に加えて斬新な未来への展望が述べられており、人と関わるロボットが身近になることがほぼ確実となっている今、必読の書である。ロボット技術そのものに興味がある人、自律、心、存在、対話、体、進化、生命など人間の根本を考えたい人、未来の世界に対する考察が聞きたい人、未来を生きる全ての人にお勧めできる。
(790文字)

追加記事 -note-

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

ジェイラボ
基礎教養部

コメント

コメントする

目次