ひとはなぜ「認められたい」のか

『ひとはなぜ「認められたい」のか』山竹 伸二 (著)

書評
執筆責任者:imadon
元々は心理学の用語であったはずの「承認欲求」という語は、今や一般に広く知れ渡っている。SNSで見ることがほとんどだろうか。承認とは文字どおり他者に認められることを指すが、SNS上の用例を見ればほぼ「肯定」と同義だと考えて良いだろう。いいね数やフォロワー数稼ぎに過激な内容や嘘を発信する「承認欲求モンスター」は、早い話、不特定多数の人間から肯定されたいのである。さて、承認欲求=他者から肯定されたい欲求が存在するとしよう。欲求が生じるということは、欲求が満たされない状態が存在するということである。睡眠不足で活動すれば仕事や学業でのパフォーマンスが低下するのと同様、承認欲求が満たされない状態=「承認不安」を放置してしまっていては、「心の病」になってしまうリスクが高まるのだと筆者は言う。科学的なメカニズムが本書で明かされている訳ではないが、その経過は素朴に理解できよう。なぜなら承認=肯定は他者との人間関係における原初のステップであり、我々の生きる社会はそうした人間関係の網目によって隙間なく埋められているからである。承認不安とは社会で生きていくことに対する不安のひとつの現れなのだ。であれば、我々はそれにどう立ち向かっていけば良いのか。その問いへの解決にあたり、本書では承認という語を、「何を」承認されるかに基づいて「存在の承認」「行為の承認」、「誰に」承認されるかに基づいて「親和的承認」「集団的承認」「一般的承認」「自己承認」と分類する。これらがいかにして発達し、連関するのかを心理学や現象学を引用しながら明らかにするのだ。結論を先取りすると、承認不安を解決する鍵は、自分で自分で肯定すること、「自己承認」にあると語られる。だがそう言っても簡単なことではない。勿論そのことも了解している筆者は、現象学を用いて「人間性の本質」に迫り、普遍的かつ詳細な解決法のプロセスを伝えてくれる。
(793文字)

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基礎教養部

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