君は君の人生の主役になれ

『君は君の人生の主役になれ』鳥羽和久 (著)

書評
執筆責任者:イヤープラグさざなみ
「君は君の人生の主役になれ」本書の内容は、このタイトルに集約されている。私は私の人生の主役である。そして、あなたはあなたの人生の主役である。何を今更と思われるかもしれない。しかし、少し立ち止まってみてほしい。この本は、世界でたった一人存在する自分という人間とその人生について、自分で改めて考え直すきっかけを与えてくれるだろう。紹介されている事例は主に、学習塾の経営者である著者が生徒から聞いた、学校でのエピソードである。先生や親などの大人から受ける理不尽な仕打ちと、それに直面してどうすればいいのかわからなくなってしまう自分。友達、同調圧力、恋愛、お金。将来に対して抱く漠然とした不安など、10代の頃に誰しもが経験するこうした心のモヤモヤは、大人になってしまったあとでは、色褪せた遠い思い出かもしれない。本書の想定読者もおそらくは、そうした悩みの真っ只中にいる中高生たちである。しかし、だからと言って、今年で23歳になる私が本書を読んで、何も得られない・心が動かされないわけはなかった。自分の学生時代を振り返ることはそれ自体で完結せず、類推的に、現在自分が置かれている状況を見直すことにもつながるし、現在の自分を知る(知ろうとする)ことは自分のこの先を展望する上で欠かせない。そしてもうひとつ忘れてはいけない。今の10代がみている大人は、かつて10代だった私たちなのだ。そういうわけで、本書は文字通り、全年齢向きである。ところで、この文章中に何度か登場する言葉のひとつに、「大人」がある。大人って、なんだろうか。「人生の主役になる」というのは、自分に関するあらゆることを自分の意思で決定していくことを意味しない。そんなことができるはずがない。世界は偶然性に満ちている。では、そのことに自覚的になることが「主役になる」ということなのだろうか。ここのところが、自分でもよく分からない。
(798文字)

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基礎教養部

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