AI支配でヒトは死ぬ。

『AI支配でヒトは死ぬ。』養老孟司(著)

書評
執筆責任者:西住
AI支配でヒトは死ぬ。そんなタイトルの対談本である。聞き手は浜崎洋介という人物で、雑誌「表現者クライテリオン」の編集委員らしい。養老氏がMMTに興味を持ったことで繋がりができたようである。さてタイトルにA Iとあるが、この本はタイトルとは異なりA Iに特化した本ではない。最近の出来事に関する養老氏のおしゃべりをまとめた本だ。死ぬ、とはいかにしてヒトがものを考えなくなるか、ということである。高度に脳化され、システムに取り込まれ、現実の対象を失い、思考を放棄する社会。そこに対して養老氏は自然、身体、現実の世界を捉えよと主張する。それは養老氏の読者にとってはおそらくお馴染みの話だろう。雑多な内容なので全てを取り上げることはできないが、私が読み取ったことはただひとつである。それは単純化されたシステムで捉えられるほど現実はシンプルではないということだ。すでに完成されたシステムの内部にいる限り、人は何も考えずにすむ。しかしそこに立ち止まっていると、現実とシステムの間に齟齬が起きたときに苦しむことになる。そもそもシステム化とは全てが予想通りになるように世界を変えていくことなので、予想通りに行かないことは、システムの安住者にとっては非常に不快なことになる。しかしどんなシステムも、現実が複雑な以上、全てが予想通りに行くわけではない。自然が残っていた時代は当然みんなそんなことは知っていのだが、都市化された現代システムという「バカの壁」の中の安住者はそれに気づかないので、常に予想通りに行かない苦しみを味わうことになる。だから壁の外に出るためにも、たまには虫取りでもして、少しは複雑な世界に触れてみろと。そうすれば不要に苦しむ必要もなくなると。つまりはそういうことである。最後にひとつ気になったのは、対談者と噛み合っているように見えないところだ。誰と話しても噛み合っているように見えないのは気のせいか。
(800文字)

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