理科系の作文技術

『理科系の作文技術』木下是雄(著)

書評
執筆責任者:chiffon cake
本書は作文技術に関する名著である。想定する読者層は主に理系の学部生で、講義課題などで調査レポートを作成するときに役立つ。私が卒業論文を執筆する際、いくつか頭を悩まされた問題が本文中で扱われていた。学部2年くらいに本書を読んでおけば、実践するにつれてレポートの質は着実に上がるだろう。もっと早く読んでおけばよかったかもしれない。ただ、私が本書の内容に共感できるのは、研究室に所属して論文をたくさん集めて読んだおかげもある。だから1・2年生が読んでもピンとこない部分があるかもしれない。また初版は1981年とかなり古いこともあり、紙に原稿を作成するための心得が書かれている。2023年に論文原稿を手書きする者がどれだけいるだろうか。いまはTeXを使うのが普通である(というか使っていこう)。学生以外の読者、つまり社会人で本書を勧めるかについてだが、正直に言うと微妙である。技術部門に所属しており、調査報告書を作成する仕事が降ってきて、本書に書かれている知識が必要な状況があるかもしれないが、そういう人は学生時代でとっくに身につけているか、上司から直接指導を受けるのではないだろうか。少々苦言を呈したが、それでも理系の学部生なら買っても損はないだろう。どうせ卒業論文なり修士論文なり書くことになるので、今日の論文と本書を併せて読みつつ自分なりにノウハウを落とし込んでいけばいい。よく研究室で指導してもらえるというが、少なくとも私の研究室では殆どなかった。レポート作成や卒業論文を作成する、これは理系大学生が必ず習得すべき資料作成能力とされているのに、具体的な方法論を教わった覚えがない。いざ執筆するとなると、おおまかな構成の決まったテンプレートを渡され、今まで読んだ学術文献の真似をするだけというケースが周りでは多かった。もしあなたが学部生であり、もっとレポートを上手く書きたいなら、すぐ購入していい。
(798文字)

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基礎教養部

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