心と脳-認知科学入門

『心と脳-認知科学入門』安西祐一郎(著)

書評
執筆責任者:Daiki
道徳の授業で、「心はどこにあるでしょうか」と問いかけられたことがある。心臓と答えた1人に8割近くの人が共感し、2割が頭に共感している中、自分の内に「心ってなんだ」という新たな問いが浮かんだ私は、その瞬間から質問がどうでもよくなってしまい足と答えた。「どこ」がわかったところで何になるのかと、反抗的で空気の読めなかったあの頃が懐かしい。そんな私が今回紹介するのは「心と脳」である。そんな少年期を過ごしていなくても誰しも少なからずは「心」について疑問を持ったことがあるのではないか。本書は3部で構成されており、第一部は、人間が起こす現象やその解説、第二部では、「心」と「脳」について科学者が取り組んできた研究の歴史、第三部では認知科学がこれから解決すべき課題について書かれている。複雑な人間の「心」についてまだわかっていないことが多いのだろう、「心」が何なのか直接的な答えは本書には書かれていない。が、それがよかった。これまでの研究でわかっていること、推測や考察が面白く、心は「社会」(『この本では、複数の人が、コミュニケーションの習慣、生活の仕組み、制度などを共有し、それを通して相互作用するシステム(コラム1)のこと』)ともかかわり合っているというのは個人的に新たな視点であった。本書全体を通して、特に第二部では、研究者の名前が多く出てくる。その研究者たちがどんな研究をして、何を成し遂げたのか概要を掴むことができるのもこの本の特徴だ。「心」や「脳」、もっと言えば「人間」について、今わかっていないことを知りたいと思う。しかしながら私は研究者では無いので、「人間」について自分で研究して解明することは出来ない。ただ、この本を読んで、研究者であっても「人間」を少しずつ理解してきたのだとわかった。研究はできずとも、私も自分なりの哲学で自分なりの答えを一歩ずつ探し続けようと決意させてくれる本でもあった。
(800文字)

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