アルジャーノンに花束を

『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(著)

書評
執筆責任者:こばやしたかゆき
SF小説の名作として名高いこちらの作品を今回は紹介したい。この本の特徴としてまず挙げられるのが、主人公であるチャーリイ・ゴードンの日記形式、つまりチャーリイ視点で文章、物語が展開していくという点だ。主人公チャーリイは32歳の青年で、知能は6歳児並みの知的障害者だ。知能が劇的に上がるという手術を受け、IQは68から徐々に上昇し、数か月でIQ185の知能を持つ天才となった。そのため、冒頭の文章は誤字脱字も多く、漢字も所々しか使われていないため、はっきり言って、読みにくい。しかし、徐々に知能が上がっていくにつれ、文章には漢字が増え、語彙も難しいものが増えていく。知能が上がっていっているという状況が、読者である我々にもタイムリーに伝わってくるため、自然と物語に引き込まれる。そしてチャーリイは知能が上がるにつれ、他人の言動の真意、過去の自分の悲しい生い立ちを、否応なく理解するようになる。優しい性格で友達もたくさんいたチャーリイ。皆と同じくらい賢くなれば、友達も増え、皆から愛されると思っていた。しかし、知能が上がった後、友達は1人もいなくなり、気付けばチャーリイ自身も、過去の知能が低い自分を見下していた周りの人達と同じように、自分より知能の低い周りの人達を見下す人間となっていた。賢くなることで我々は幸せになれるのだろうか。この質問を投げかければ、多くの人はYESと答えるだろう。その証拠に、世の中には数多の賢くなるコンテンツ、場所、そういったモノが用意され、我々は利用している。アルジャーノンとは、この物語の中で手術で賢くなったハツカネズミの名前である。実験で使用されたハツカネズミの墓標に花束を手向けるという行為のための余白は、現代社会の中に存在するのだろうか。 
(736文字)

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