「超」整理法

『「超」整理法』野口悠紀雄(著)

書評
執筆責任者:けろたん
本書のテーマは情報の整理だ。著者は、1980年代から2022年現在まで、旺盛な執筆活動を通してオピニオンリーダーであり続ける野口悠紀雄氏だ。序章では、整理の必要条件だと当然のように認識されている分類行為が、それ自体で困難な問題であることが指摘される。内容で分類し、見栄えよく配置するのが整理であるという認識では書類が片付かずかないと納得できる。続く1章では、内容別分類に代わって、時間順に並べる「押し出しファイリング方式」が提唱される。書類を一列に並べ、使ったものを一方の端にしまっていくだけ。「よく使うものはよく使う」というトートロジーが絶大な威力を発揮する。2章はパソコンをつかった情報整理法である。分類整理に陥りがちなフォルダ構造を避け、ファイルの命名や検索で目当てのファイルを得る方法論が紹介される。現代風にアレンジが必要な部分もあるが、愚直に探索するコンピュータを最大限利用する技法は情報量が増えた今こそ有用性を増している。氏の提唱する「超」整理法とその他の整理法が比較されるのが3章だ。情報を利用するのが個人か多数か、整理するのにどれだけ労力を割けるかといった観点で、超整理法の利点が解説される。整理を属人的なノウハウから客観的に改善可能なプロセスにするための判断基準とともに説明されるので、テクニックを自己流にカスタマイズする際にも役立つだろう。既存書類の扱いを説明した1〜3章に対し、4章では記録に値するアイデアを思いつくための方法が述べられる。知的生産が活発なグループに加わる以上の良策はないとしながらも、知的生産を効率化するためのデバイス利用法が紹介される。本書は、情報技術を活用した教育の変革と生産性の向上が不可欠だという提言で締め括られる。30年の時を経た今でも古びていない。note記事ではいわゆる実用書というものについての意見を述べる。
(782文字)

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