2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?

『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』西村博之(著)

書評
執筆責任者:けろたん
ひろゆきとは何者なのか。雑談配信者あるいはディベート芸人など演者としての露出の影に隠れてしまった一面がある。ネット掲示板管理人。つまりシステム管理者としてのひろゆきである。彼がIT技術とそれを利用する人間社会をどのように捉えているのか。本書ではそれらが2ちゃんねるの運営経験はもとより2000年代のIT業界を取り巻く社会的、法的環境への観察を通して語られる。通底するのは、技術が発展しても、人(のコミュニケーションに対する欲求)は変わらない、という視点である。その考えが最も直接的に表れている部分を引くに、(2ちゃんねるが潰れることに対して)「人がいろいろなことに対して会話をするという場所というものは、名前を変えてまた別のものが生まれると思います。(中略)需要のあるものを規制するのはなかなか難しいと思うのですよ。表面的に禁止したとしても、新しい問題が出てしまうだけだと思ったりします」。インターネットの本質をコミュニケーションの媒介/場として捉え、人間の特性を無視せず、新技術を想定していない法規則や社会規範との現実的な関係を探ぐる。あたりまえに思えることだが彼のように言論空間を実際に管理しつづけるためには、技術に対する信奉と人間の倫理に対する信頼のどちらにも傾きすぎてはいけない。インターネットのあり方について語るときも同様だろう。デジタルプラットフォームのインフラ化・透明化がネット接続端末のモバイル移行によって完成する前に、10年以上前に出版された本書を起点に、あり得たかもしれないインターネットとそれを取り巻く理想の社会を思索してみはどうだろうか。アイデアのピースは「ロジカル」に提示されておりIT技術に詳しくなくても節々から彼のどこが優れてい(る|た)かも見て取れる。続く論考では本書での理解をもとにネット上では教育の情弱ビジネス的側面が増幅されることを考察する。
(790文字)

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