苦しかったときの話をしようか

『苦しかったときの話をしようか』森岡 毅 (著)

書評
執筆責任者:YY12
就職に関して人は悩む。そして、まとまったことは誰も教えてくれない。就職というのは非常に個人的な問題であって教えにくいという部分はあるが、悩める子羊にとって参考になる教えがないというのは酷でもある。周りに話を聞いてくれる人がいればいいが、仮にいたとしても納得できる解答が出てこないことも多い。そんな時、優れた仕事人がその経験を基にして記した話を読むのはきっと参考になるだろう。本書は就職に悩む愛娘に父親である森岡毅氏が一筆とったものである。森岡毅といえば、経営難に陥っていたUSJや丸亀製麵を立て直したことで知られる優れたマーケターである。前提として、「就職」といっているが、「4年制大学を卒業し尚且つ組織(会社)に務める」というモデルを想定している。日本だけを見てもそれは圧倒的多数派ではないので、「働き方」一般について述べていないことには注意して欲しい。ただ、そのモデルにすっぽりハマっている自分のような人間には参考になるアイデアも多い。例えば、働くことの基礎として「強みを研くこと」を進めている。これは本書の主題でもある。働くことに関する悩みに関して、本書の娘さん同様、多くの人はどの進路を選ぶべきかで悩むことはある。「どの業種にしようとか、どの職種に就こう」とかである。しかし、いざ働いた時にどのような心持ちで働くかまで想定することはなかなかない。故にこの視点は新しかった。「強み」さえ研けば評価や報酬も自ずとついてきて生きやすくなるらしい。このような本を読む人の多くは、「ビジネス」に関心がある少なくとも前向きな人で、逆にそういったものを最初から嫌う人は触れもしないで鼻で笑うことが多いだろう。この本は確かに「ビジネス」の世界で永く生きていた人間が発する雰囲気はあるが、父親が娘に語りかける言葉でもあるので人情味もある。後者の人も毛嫌いせず読んでみて欲しい。
(783文字)

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基礎教養部

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