みんなで楽しむ eスポーツ

『みんなで楽しむ eスポーツ』田簔 健太郎(編集)

書評
執筆責任者:Bungeee
競技と娯楽のあいだに存在するもの-それが、eスポーツである。「e-sports」という表現が使われるようになったのは2000年頃からで、「eスポーツ」が知られてきたのはここ数年のことだ。そのため、eスポーツといえば、娯楽としてのゲームをイメージする人が多い。そういう方々にぜひ読んでいただきたいのが、今回紹介する『みんなで楽しむeスポーツ 多様性とICTの時代に即した新しいスポーツの可能性』(田簑健太郎 山川出版社 2021)である。この著者は、スポーツ学の専門家であり、スポーツ人類学やスポーツ教育学などの観点からeスポーツの可能性について探られている。「eスポーツはスポーツなのだろうか」プロ選手やファンのあいだでも意見が分かれる問題だ。この問題について著者は、古代ラテン語「deportant」から「sport」へと単語が変化した流れやスポーツそのものの歴史を踏まえた上で話を展開していく。また、スポーツ教育学の観点から、近年、道徳の教科化やプログラミング教育の必修化など変化が著しい教育現場におけるeスポーツに対する声が集められている。はたしてeスポーツは教育になり得るのか。eスポーツは、プレイヤーの年齢層が低い。例えば、反射神経が要求されるFPSのプロプレイヤーの平均的な寿命は、20代中盤といわれている。10代のプレイヤーは決して珍しくなく、高校生や小学生のプレイヤーも多く存在する。そのため、マナーやモラルについて問題視される場面が多い。そういう意味でも教育現場にeスポーツを導入する意義はあるように考えられる。クリアすべき課題や子どもたちとどう向き合うべきか。また保護者の理解をどうやって獲得するか。筆者は、eスポーツはこれからの「体育授業」を大きく変容させる可能性もあるという。無限の可能性を秘めたeスポーツ。本著を読めば、eスポーツの可能性の大きさに心が躍る。
(792文字)

追加記事 -note-

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

ジェイラボ
基礎教養部

コメント

コメントする

目次