神さまと神はどう違うのか

『神さまと神はどう違うのか』上枝美典 (著)

書評
執筆責任者:チクシュルーブ隕石
「神」という言葉を聞くとどんな印象を受けるだろうか。身構えてしまう人、神を身近に感じる人など各人のこれまでの生き方により受け取り方は様々であろう。特に、日本は特定の宗教に帰属意識を持たない無宗教・無神論者の人が多い為、日本人には神について自分の中に明確な定義を持っている人は少ない。本書『神さまと神はどう違うのか』は宗教を哲学的な視点から捉えた宗教哲学の入門書である。本書では、タイトルにもあるように「神」と「神さま」を別の概念として捉え、哲学的思想の対象としての「神」と宗教的信仰の対象としての「神さま」を区別しながら議論が進んでいく。つまり、私たちが普段宗教的な対象として呼称する神は「神さま」に当たる訳である。その中でも西洋における「神さま」は、全知全能の絶対の存在である西洋哲学の「神」の影響を非常に強く受けている。言うなれば、「神さま」が「神」から多くの性質を引き継ぎだ一貫した存在なのである。それに対して、日本及び神道には万物に「神さま」が宿っているという「八百万の神」なる思想が存在しており、唯一絶対の神という文化が身近ではない。このことは、日本人が想起する「神さま」と西洋圏の人々が抱く「神さま」は基礎部分が大きく異なっていることを示している。さて、ここまでで「神さま」を取り巻く地域の事情を取り上げたが、ここで気になるのは「神さま」とは何かというである。このことを考える際、「神さま」は作られたと考えると合点がいく。ここでの作られるとは、物質として世界に存在している事と必要十分ではない。現に、「神さま」を物質として知っているという人間は存在しない。「神さま」は信じている人がいるということこそが最も重要なのだ。神について考えていたが、結局のところ人間ということである。是非、本書を手に取り「神」と「神さま」の繋がりを感じて頂きたい。
(776文字)

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基礎教養部

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