考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門

『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』梶谷真司 (著)

書評
執筆責任者:イヤープラグさざなみ
「考える」ことは知的であるというよりむしろ身体的な活動であって、自らの身を以て体感するものであるというのが本書の主張である。「考える」ことそれ自体がどういうものであるかを言葉で説明するのは難しい。しかしそれをしているときの「あの感覚」を誰もが知っている。考えることはいつだって、問うことから始まる。問いこそが思考の起爆剤であり、そして思考を方向づけるものでもある。自分の中で問いさえ立ててしまえば、あとは自動的に思考が進んでいく。いや、というよりも、問いを立てようとすることこそが「考える」であるとも言えそうだ。とりあえず、問う。何でもいい。次は、問いを問う。「~とは何か」と言葉の意味を明確にしようとしたり、「なぜ~なのか」と理由や根拠を追求したりする。場合分けをしたり、時間軸や空間軸を用いて比較したりすることもできる。更には、そう問う自分を見つめ、「なぜ自分は~と問うのか」と問うこともできる。このように、問いを立てるための「型」がいくつも存在する。こうして出来上がった、または積み重ねている最中の問いを他者と共有し、対話を通して考えを深めることを本書は強く勧める。他者と共有するためには自分の考えを言葉にする必要があり、その過程で自己の思考が明確化される。そして問いを他者と共有したならば、たとえそれに答えを見つけ出せなくとも、大きな意味があるだろう。「対話を通して考えるのは、自由になるためだ」と筆者は言う。自分と違う考え方に触れた際に感じるのは、一方ではそれまで自分を縛っていたものからの解放感であり、他方では自分を支えていたものを喪失したことによる不安定感であろう。他者との接触によって、この両義的な自由の感覚を体感する。「考える」も「自由」も自分自身が身を以て体感するほかない。とりあえずやってみる。遅すぎることはない。本書の副題は、「0歳から100歳までの哲学入門」である。
(796文字)

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