数学受験術指南

『数学受験術指南』森毅(著)

書評
執筆責任者:Hiroto
数学受験術.この技術がピンポイントで役立つ人はどれだけいるだろうか.大学受験生,特に理系の諸君はストレートに本書を活用することができるだろう.著者は森毅,言わずと知れた数学者である.もちろん大学入試の採点の経験もある.採点者がどのような基準で採点を行なっているのかを本書は細かく記しているため,敵を知るという意味でも理系の大学受験生はぜひ目を通すべきだ.それでは,世の中的マジョリティである受験や数学と無縁の人々は,本書を読む意味がないのだろうか.ストレートに読めば,得るものは少ないかもしれない.詳細に記された具体的テクニックや著者の受験話,それらを実生活に直接活かすことは望めないだろう.そもそも本を読んで何かに活かそうなどと考えること自体ナンセンスなのかもしれないが,それでももう少し広い視点で読むと,意外にも普遍的な記述が多く含まれている.数学の関係ない受験生は,受験一般への向き合い方を.数学受験を終えた大学生は,受験数学と大学数学の接続を.受験生でなく数学に興味ある人は,数学との付き合い方の実例を.数学も受験も無縁の人は,生き方のヒントを.それぞれ感じ取ることができるだろう.本書の中で,答案を作る際に細部と骨格どちらを優先すべきかは議論が尽きない,といった趣旨の記述がある.これは本書を読む際にも同様であるように感じる.私のようなドのつく理系は細部のテクニカルな記述に目がいって,そこから読み取れる人生のヒントのようなものにあまり目が行かなくなりがちだ.逆に数学や受験と無縁な人々は,細部の記述は役に立たないこともあって,もっと普遍的な本書に通底する信念(骨格)が見えやすいのではないだろうか.答案を作るとき同様,双方の読み方に決まった優劣はないが,テクニカルな記述が多く含まれた本書は,それだけに読者によって読み取る情報が大きく変容しうる.あなたは本書から何を読み取るのだろうか.
(799文字)

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基礎教養部

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